「渋滞でトイレに行けなかったらどうしよう」「車内でにおいが気になる」「長時間座っていて圧迫されないか」
年末年始の帰省や旅行は楽しみな一方、ストーマ保有者にとって長距離移動にはこうした不安がつきものです。
この記事では、車と新幹線での長距離移動に焦点を当て、具体的な対策と事前準備を解説します。少しの工夫で、年末年始の移動を安心して過ごしましょう。
年末年始の長距離移動で想定されるストーマ保有者の悩み

年末年始の帰省や旅行シーズンは、交通機関の混雑や渋滞が起こりやすくなります。ストーマ保有者が長距離移動で直面しやすい不安は主に3つです。
- 排泄物の処理のタイミング:渋滞や満席で思うようにトイレに行けず、装具交換のタイミングを逃す不安
- においへの配慮:密閉された車内や座席で、周囲への配慮が必要になる不安
- 装具の圧迫:長時間の座位により、ストーマ装具が圧迫され、不快感や漏れの不安
こうした不安を軽減するためには、出発前の準備と移動中の工夫が欠かせません。事前に対策を整えておきましょう。
出発前に済ませておきたい準備と荷物の工夫

長距離移動を安心して過ごすには、出発前の準備が重要です。
ストーマ用装具を多めに用意し、経路上のトイレを事前に確認しておきましょう。また、旅行用の荷物とは別に、トラブル時にすぐ対応できるよう、ストーマ用品をまとめた手荷物を準備しておくと安心です。
移動中に携帯するストーマ用品の選定
移動中にすぐ取り出せるよう、必要なケア用品を1セットにまとめてポーチに入れておくと便利です。
- 交換用ストーマ用装具(1〜2セット):フリーカット装具の場合、面板の孔(あな)はあらかじめストーマのサイズに合わせてカットしておくとスムーズです。
- 廃棄用ビニール袋:中身が見えない不透明なものや、防臭効果のある袋がおすすめです。
- ウェットティッシュやガーゼ:ノンアルコールタイプや、水なしで使える清拭剤も便利です。
- 携帯用消臭剤:トイレ使用時や装具交換時に役立ちます。
- 衣服キーパー(洗濯ばさみ):狭いトイレでの交換時、衣服を留めておくのに便利です。
- ストーマ用ハサミ(フリーカットの場合):車や新幹線(鉄道)での移動では手荷物として問題ありません。
飛行機を利用する場合は、ハサミは機内に持ち込めないため、必ず受託手荷物(預け入れ荷物)に入れましょう。
出発直前のストーマ用装具の交換
長時間の移動中に漏れなどのトラブルを防ぐため、出発前にストーマ用装具を新しいものに交換しておくと安心です。パウチ内を空にしたうえで、面板の密着性が高い状態で出発できるため、移動中に慌てて交換する場面を減らしやすくなります。
特に、車で複数人と移動する場合は、事前に新しい装具と交換しておくことで、においの発生や装具のトラブルを防ぎ、快適に過ごせます。
移動経路上のトイレ(SA・駅)の確認
事前にトイレの場所を把握しておくだけで、安心につながります。
- 車での移動
高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)の多目的トイレやオストメイト対応トイレの設置状況を、高速道路会社(NEXCO東日本・中日本・西日本など)のウェブサイトなどで確認しておきましょう。 - 新幹線・電車での移動
多くの新幹線や特急列車にはトイレが設置されていますが、車両によってはオストメイト対応トイレがない場合もあります。事前に利用する列車や駅のトイレ設備を、鉄道会社の公式サイトで確認しておくと安心です。また、駅構内のオストメイト対応トイレを調べる際は、「オストメイトJP」などの検索サイトも参考になります。
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【車での移動】渋滞や座席の圧迫への対策

車での長距離移動では、渋滞でトイレに行きにくくなることや、長時間座ることで装具が圧迫されることが課題です。
シートベルトの位置、渋滞時の対応、装具の保管場所の3点に注意し、家族とも対策を共有しておくと安心です。
シートベルトによるストーマの圧迫回避法
シートベルトがストーマ用装具に直接当たって圧迫しないよう、ストーマの上方または下方に位置をずらして締めるとよいでしょう。
位置の調整だけでは圧迫が気になる場合は、畳んだタオルなどをストーマ用装具の上に当て、クッション代わりにする方法も有効です。市販のシートベルトストッパーなどを活用する方法もあります。
渋滞時のにおいや排泄物処理の工夫
渋滞で長時間トイレに行けない事態に備え、特にウロストミーの方は、パウチ内の尿を排出するために、緊急用として携帯トイレを準備しておくと安心です。あらかじめパウチに接続できるレッグバッグ(蓄尿袋)を利用するのも有効です。
携帯用の消臭剤やスプレーなどを持参しておくと、万が一の交換時や処理時に役立ちます。複数人で乗車する場合は、においがこもらないようこまめに換気を行うことがおすすめです。
車内でのストーマ用装具の適切な保管方法
ストーマ用装具(特に面板の皮膚保護剤)は熱に弱く、高温になる場所に放置すると変形したり粘着力が弱まったりする可能性があります。
予備のストーマ用装具は、直射日光が当たるダッシュボードや、高温になりやすいトランクの中に置くのは避けましょう。
【新幹線・電車での移動】限られた設備での対処法

新幹線や特急列車での移動は、トイレ設備がある一方で「トイレが狭い」「座席でのにおいやガス音が気になる」といった悩みもあります。
多目的トイレが設置されている車両もあるため、乗車前にその位置を確認しておくと安心です。
狭いトイレを上手に使うコツ
新幹線などのトイレはスペースが限られているため、装具を交換しやすい、ゆとりのある服装を選びましょう。交換作業中に衣服が汚れないよう、衣服キーパー(洗濯ばさみ)で裾などを留めておくと便利です。
また、交換に必要な物品は、あらかじめ1回分ずつポーチなどにまとめ、すぐに取り出せるようにしておくとスムーズに作業できます。
においやガス音への配慮と座席の選び方
座席を予約する際は、万が一の際にすぐにトイレに行けるよう、トイレに近い「通路側の座席」を選ぶと安心です。周囲へのにおいやパウチからのガス音が気になる場合は、携帯用の消臭剤を使用したり、あらかじめパウチに消臭潤滑剤を入れておいたりすると役立ちます。さらに、ガス音やカサカサ音が気になる方は、防音パウチカバーなど音を和らげるグッズを活用するのも一案です。
列車内のトイレは、停車の直前や直後は利用者が集中しやすいため、時間に余裕をもって早めに利用しましょう。
こちらの記事もぜひご覧ください。
防音パウチカバー しずか
遮音率55%(メーカー調べ)の防音・防臭パウチカバーです。裏地にはやわらかいキルト生地を使用し、ガス音やカサカサ音を抑えます。

デオファインパウダー
排泄物のにおいを抑える消臭用品です。天然由来成分のポリフェノールがにおいの発生や拡散を抑えます。ミント系のさわやかな香りです。持ち運びに便利なスティックタイプの個包装です。

食事と水分の摂り方を工夫する
長距離移動中は、パウチ内にガスが溜まりやすくなるため、炭酸飲料の摂取は控えましょう。食事も、芋類・豆類・きのこ類などガスを発生しやすい食品を移動前や移動中に多く摂らないよう注意しましょう。
ただし、水分を控えすぎると脱水症の原因になります。水や白湯、お茶などでこまめに補給することを心がけましょう。
※食事やガスの発生には個人差が大きいため、ご自身の体調に合わせて調整し、不安な点は医師や看護師にご相談ください。
長距離移動の安心を支える携帯用アイテム

長距離移動の不安を軽くするために役立つ、携帯に便利なアイテムを紹介します。
万が一に備えて、必要なケア用品をまとめたセットや消臭グッズを携帯しておくと安心です。これらは旅行時だけでなく、災害などの非常時にも役立ちます。
非常用持出し袋
緊急時にすぐ持ち出せるよう、必要な11品のケア用品がリュックにセットされています。リュックは折りたたむことも可能で、旅行などで使用するのにも便利です。

ダンサック ノドールS 50ml
パウチの交換時や排出時に、排泄物から生じるにおいを中和する無香料・無色の消臭液です。持ち運びやすい50mLのボトルタイプです。

ニオフ消臭スプレーボトル200ml 2本セット
オストメイトの方の不安な気持ちにお応えする消臭スプレーです。独自技術でニオイ分子を組み替えて消臭します。(便臭95%・尿臭75%を約10分で消臭/メーカー調べ)。

長距離移動に関するよくある質問

長距離移動に際して多く寄せられる疑問や不安に対し、具体的な対策を紹介します。
長時間の移動中、ストーマ用装具からの漏れが心配です。どうすればいいですか?
出発直前にストーマ用装具を交換し、排泄物を処理しておくことをおすすめします。万が一に備え、交換用の装具一式を手荷物として携帯しておくと安心です。車で移動する場合は、シートベルトがストーマ用装具を圧迫しないよう、ストーマの上方または下方に位置をずらして締めるとよいでしょう。また、どの移動手段でも、お腹まわりにゆとりのある服装を選ぶことで、圧迫を避けて快適に過ごせます。
車内や新幹線の座席で、においやガスが気になるときはどうしたらいいですか?
事前の対策として、携帯用の消臭剤や消臭潤滑剤を準備しておくと安心です。さらに、においが気になる方は、消臭機能のあるパウチカバーや腹帯(下着タイプ)など、身につけるタイプの消臭グッズを活用するのもおすすめです。
パウチにガスが溜まってきたら、早めにトイレで処理しましょう。また、ガスの発生には個人差がありますが、移動前や移動中は炭酸飲料やガスが発生しやすい食品を避ける工夫も有効です。
新幹線でストーマ用装具を交換したい場合、どのような場所を利用できますか?
多くの新幹線や特急列車には、多目的トイレやオストメイト対応トイレが設置されています。多目的トイレは、一般的な個室トイレよりスペースにゆとりがあり、装具交換がしやすいよう配慮されていることが多い一方で、車両によってはそれでも狭く感じる場合があります。
オストメイト対応トイレが設置されている場合も、設備内容は列車や車両によって大きく異なります。汚物流し台や温水シャワーなどが備わっているものもあれば、便器と手洗い程度の簡易的な設備にとどまる場合もあります。設備をあらかじめ把握しておくためにも、乗車前に利用予定の列車の設備内容を公式サイトなどで確認しておくと安心です。
ストーマに関するご相談はヤガミホームヘルスセンターへ
年末年始の長距離移動は、ストーマ保有者にとって不安が伴うものですが、事前の準備と少しの工夫で不安は軽減できます。移動経路のトイレを確認し、必要なケア用品を手荷物として準備して、安心して帰省や旅行を楽しみましょう。
ヤガミホームヘルスセンターでは、ストーマに関するお悩みや、旅行に便利なケア用品についてのご相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や医学的助言を行うものではありません。
※ストーマケアに関する個別の判断は、必ず医療従事者にご相談ください。
※商品の詳細や使用方法については、各製品の添付文書をご確認ください。
※掲載商品の効果には個人差があります。
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