ストーマ造設後の日常生活の中で、「入浴はこれまで通りできるのか」「においが気になるのではないか」といった疑問や不安を抱く方は少なくありません。
この記事では、ヤガミホームヘルスセンターにお客様から実際に寄せられた、ストーマに関するよくある質問と回答を紹介します。日々のケアから災害時の備えまで、安心して生活を続けるための情報を整理してお伝えします。
パウチに関するよくある質問
ここではストーマ保有者の方の生活に不可欠な「パウチ」に関するよくある質問にお答えします。
パウチを適切に使用するためには、まず基本的な特徴を理解しておくことが重要です。パウチは使い捨て製品のため、定期的な交換が必要になります。装具の適切な使用方法を理解することが、皮膚トラブルの予防や快適な生活につながります。
Q.パウチは洗って再利用できますか?
パウチは衛生面と機能面から使い捨て製品として設計されています。洗浄しての再利用はできません。
【パウチを洗って再利用した場合に起こりうるリスク】
- フィルムの損傷:洗浄によってパウチのフィルムが傷つき、便やにおいが漏れる原因になる
- においの付着:洗浄時に便がパウチの不織布部分に付着し、においの原因になる
常に清潔なパウチを使用することは、皮膚トラブルを防ぎ、快適な生活を送るために重要です。定期的に新しい装具に交換することで、より快適に過ごすことができます。
ストーマと日常生活に関するよくある質問

ストーマ保有者が日常生活を送るうえで気になる「におい」「入浴」「運動」に関する質問と回答をまとめました。
それぞれの場面で安心して過ごすための注意点や工夫を紹介します。
Q.においの漏れが心配です。どう対策すればよいですか?
ストーマ用装具のパウチ自体には防臭機能があり、消臭ガス抜きフィルターが内蔵されているものも多いため、正しく装着すればにおいはほとんど気になりません。ただしすべての装具にフィルターがあるわけではないため、使用する装具の種類によって対策が異なる場合があります。
【においが気になるときの確認ポイント】
- 面板はしっかり密着しているか
- パウチの排出口に排泄物が付着していないか
- 使用しているパウチに穴や傷がないか
におい対策には、専用の消臭剤や拭き取りシートなど、消臭に特化したストーマケア用品を利用すると効果的です。
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デイリーデオワイプ 80枚入×3個
新発想の消臭技術「デオマジック」を配合し、悪臭成分と合わさると良い香りになるように作られた排出口用拭き取りシートです。ウェットタイプで素早くきれいに拭き取れて、そのままトイレに流せます。

ダンサック ノドールS
ストーマ用装具の交換時や排泄物の排出時に排泄物から生じるにおいを中和する消臭液です。パウチ交換時に使用することで消臭フィルターを長持ちさせます。

Q.自宅での入浴時に気をつけることはありますか?
装具を取り外して入浴する場合でも、体内の圧力により、お湯がストーマから体内に入ることはありません。ただし入浴中に排泄があった場合に備えて、心配な方は装具を装着したまま入浴することをおすすめします。特に、ウロストミーの方は常に尿が出続けるため、安心して入浴するには装具をつけたままの方が適しています。
以下のポイントをおさえることで、装具の有無にかかわらず安心して入浴できます。
【装具をつけたまま入浴する場合のポイント・注意点】
- 準備:装具の密着確認、排泄物やガスの事前処理、防水テープの活用
- 入浴中:お湯の温度(40℃前後の熱すぎない温度)、長湯を避ける
- 入浴後:装具の水分をしっかり拭き取る
【装具を外して入浴する場合のポイント・注意点】
- 準備:食前または食後2時間以上経過後に入浴する
- 入浴中:排便に備えて、ビニール袋を浴室に用意する
- 入浴後:ストーマ周辺の水分をタオルでしっかり拭き取る
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下記のような入浴シートを使うことで、より不安を和らげて入浴を楽しむことができます。
バスラックシール
装具全体を覆い、濡らさない防水機能を備えた入浴シートです。表面には凸凹を目立ちにくくするまだら模様が施されており、装具が外見上気になりにくいよう配慮されています。装具の上から貼付する仮留めシールで、装具をコンパクトに固定することもできます。

入浴用ウォーターガードシート
装具を濡らさずに入浴できるシートです。パウチにくっつきにくい特殊PVCフィルムシートで装具全体をカバーし、パウチが濡れるのを防ぎます。半透明タイプと透けないタイプの2種類があり、特に透けないタイプは旅行先での入浴や温泉に適しています。

Q.運動はしてもいいですか?注意点はありますか?
ストーマを造設された方も運動は可能です、適度な運動は健康維持に役立つとされており、体調に合わせて取り組むことが大切です。ウォーキングのような比較的負担の少ない運動から始めて、ご自身のペースに合わせて継続することをおすすめします。
運動時は汗や体の動きによる装具の剥がれを防ぐため、ストーマベルトや固定テープといったストーマケア用品が有効です。これらを使用することで面板の皮膚保護剤と皮膚の密着性がより高まり、装具が剥がれにくくなるため安心して運動できます。
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以下のような運動時のサポートベルトを活用することで、より快適に体を動かすことができます。
変えるくんストーマベルト
面板の密着性を高めるためのベルトです。面板の皮膚保護剤と皮膚をしっかりと固定することで、ストーマ用装具が剥がれにくくなり、運動時の安心感を提供します。備長炭生地ににおいを軽減する「インドアフレッシュ加工」を施したベルトです。運動時の気になるにおいに配慮した設計となっています。

ストーマアクティブベルト
運動時の装具の安定性を高め、体幹をひねったり汗をかいたりする動作でも装具のずれや剥がれを防ぐベルトです。ウエストサイズ、ストーマの開口部のサイズに合わせて、4種類の中からサイズをお選びいただけます。

食事に関するよくある質問

ストーマ保有者も、基礎疾患がなければ特に食事制限の必要はありませんが、食べる食材や量により排泄物のにおいやガスの発生に大きく影響します。適切な食事管理は消化器の負担を減らし、排泄物の状態を整えるために重要です。
以下では、食事に関するよくある質問について解説します。
Q.においやガスが気になります。避けた方がよい食べ物はありますか?
においやガスの発生が気になる時には、以下の食品を控えることがおすすめです。
- においが強くなる食品
アルコール、にんにく、ねぎ、にら、たまねぎ、たまご、豆類、甲殻類、アスパラガス、チーズなどの乳製品 - ガスを発生させやすい食品
炭酸飲料、ビール、山芋類、ごぼう、さつまいも、キャベツ、大根、貝類、豆類、カリフラワー、ブロッコリー、ねぎ、チューインガム
これらの食品を完全に避ける必要はありません。ただし、食材や量により排泄物のにおいやガスの発生は変化します。
Q.においやガスを抑える食べ物はありますか?
以下は、においやガスの軽減に役立つとされる食品です
においを抑える食品
- 消化器系ストーマを造設された方
乳酸飲料、パセリ、ヨーグルト、レモン - 尿路系ストーマを造設された方
オレンジ、アセロラジュース、緑茶、グレープフルーツ、クランベリージュース
ガスを抑制する食品
- ヨーグルト、味噌、納豆、キムチ、甘酒などの発酵食品や、レモンなどの酸性の食品
これらの食品を普段の食生活に取り入れることで、においやガスに関する不安を和らげることができます。
Q.食事のタイミングで気をつけることはありますか?
就寝2時間前に食事や水分摂取を済ませることで、夜間の消化活動を落ち着かせ、排泄量を減らすことにつながります。
また、ゆっくりよく噛んで食べることで空気の飲み込みを減らし、ガスの発生を抑えることができます。なお、食事中の会話、麺類をすする動作、ストローの使用は空気を多く取り込みやすいため、ガスが気になる方は控えめにすることをおすすめします。
旅行・宿泊に関するよくある質問

ストーマ造設後も、温泉や銭湯などを利用して旅行を楽しむことができます。温泉や銭湯は公共の場であるため、自宅での入浴とは異なり周囲への配慮が必要となります。
Q.旅行や宿泊に行く時の準備で気をつけることはありますか?
旅行の際は、ストーマ用装具や防水用のテープなどのストーマケア用品を予備も含めて用意することが重要です。旅行先では普段と異なる環境になるため、いつもより多めに装具を持参することをおすすめします。
また、宿泊施設周辺の医療機関を事前に確認しておくと安心です。病院や診療所の場所や連絡先を把握しておけば、万が一の際にも迅速に対応できます。
Q.温泉や銭湯、大浴場に入る時に注意することはありますか?
自宅でストーマ用装具を外して入浴している方も、公共の温浴施設では予期しない排泄に備えて、装具を装着したまま入浴しましょう。入浴中にストーマ用装具を外したり、その場で装具を洗ったりすることはマナー違反となります。
入浴前にパウチ内に溜まった排泄物とガスを処理しておくと、よりコンパクトになります。
Q.人目が気になる場合はどうすればよいですか?
人目が気になる方は、以下のような工夫をすることで、安心して温泉や銭湯を楽しむことができます。
【時間帯の工夫】
混雑していない早朝や夜間など、入浴する時間帯を工夫することがおすすめです。人が多い時間帯を避けることで、周囲を気にせず入浴を楽しめます。
【位置の工夫】
脱衣所や洗い場では、ストーマを造設している部位が壁側に向くようにすると安心感が増し、よりリラックスして過ごせます。
【施設の選び方】
貸切風呂や個室の浴場がある温泉宿を選ぶのも一つの方法です。完全にプライベートな空間で入浴できるため、人目を気にする必要がありません。事前に宿泊施設のウェブサイトや電話で、貸切風呂の有無や利用方法を確認しておくと、当日の不安を減らすことができます。
ストーマから出る音に関するよくある質問

ストーマ保有者にとって、日常生活におけるガスの音は、デリケートで大きな悩みの一つです。
ストーマから出る音に関するよくある質問として、ガスの音が出る原因、音を小さくする方法、音が大きくなりやすい状況について解説します。
Q.ガスの音が出る原因は何ですか?
一般的に、腸に溜まるガスの約80%は食事中に飲み込んだ空気、残りの20%は腸内細菌の活動により発生するといわれています。小腸に造設されたストーマでは飲み込んだ空気が、結腸に造設されたストーマでは腸内細菌が関与するガスが主な原因となります。
ストーマには肛門とは違って括約筋がないため、ガスの排出をコントロールすることができません。そのため、ガスが発生すると自然に体外へ排出されることになり、腸の動きやガスの勢い、体勢などによってストーマからガスが出る際に音が発生します。このような音は自然な生理現象です。
Q.音を小さくするにはどうすればよいですか?
ガスが出そうになったときは、ストーマの上に軽く手を当てることで音を抑えることができます。ストーマの位置に応じて、左側なら左手、右側なら右手を使い、手のひらでそっと覆うようにすると、より効果的です。
また、座る位置を工夫して腹圧がかかりにくい姿勢を心がけ、前かがみになるのを避けることも、簡単にできる対策の一つです。さらに、防音機能のあるパウチカバーを使うと、ガスが出るときの音を抑える効果が期待できます。
Q.音が大きくなりやすいのはどんな時ですか?
バルーニングという現象が起きているときは、特に音が大きくなりやすい状況です。バルーニングとは、パウチ内にガスが溜まって袋が膨らむ現象のことで、この状態ではガスが排出される際に、パウチ内の圧力によって音が強まることがあります。
音が大きくなりやすい原因としては、以下のようなケースがあります。
- ガス抜きフィルターの目詰まり:便により通り道が狭くなることで音が増大します。特に水様便の方は排泄物が付着しやすく、フィルター機能が低下しやすいです。
- 排出口を開けてガス抜きをする場合:溜まったガスが一度に排出されるため、音が発生しやすくなります。
就寝時・夜間のよくある質問

睡眠に関する悩みは多くのストーマ保有者が経験するものです。適切な対策を知ることでよりよい睡眠環境を整えることができます。
Q. 夜中に目が覚めてしまう原因は何ですか?
夜中に目が覚める主な原因は以下の3つがあります。
- 漏れに対する不安
排泄物が漏れないか不安で眠りが浅くなることです。多くのストーマ保有者が、漏れが気になって数時間おきに目が覚めたり、装具が剥がれないか気になり熟睡できなかったりする経験があります。 - ガスによるパウチの膨張
夜中から明け方にかけて副交感神経(リラックス時に働く神経)が優位になると腸ぜん動(腸が消化した食べ物を送り出す動き)が活発になり、夜間に排泄物やガスがたまり、その感触や重みで、睡眠が妨げられることがあります。 - 尿の逆流に対する不安(ウロストミーの方の場合)
夜間は安静と保温により腎血流量が増加し、尿量が増加する特徴があります。そのため、尿が逆流しそうで不安になることがあります。
Q.安心して眠るためにはどうすればよいですか?
安心して眠るためには、就寝前の準備が重要です。まず、就寝2時間前に食事や水分摂取を済ませることで、夜間の消化活動を落ち着かせ、排泄量の軽減が期待できます。
寝る前に排泄物を処理してパウチを空にしておくことで、夜間の膨張や重みで目が覚めるのを軽減できます。
また装具が剥がれる不安を軽くするためには、固定力を高めるテープを使用するのが効果的です。装具の周囲に貼ることで粘着力が向上し、夜間の寝返りや体位変換による装具の剥がれを防げます。
Q.夜間の尿の問題が心配です。どう対策すればよいですか?
ウロストミーの方は、夜間の尿対策として採尿バッグの活用が効果的です。就寝時は容量の大きな採尿バッグ(1,000~2,000mL)を使用することで、朝まで安心して眠ることができます。
通常のパウチでは容量が不足する可能性があるため、大容量バッグを使用することで逆流リスクを軽減できます。また採尿バッグはストーマより低い位置に設置することで、重力を利用してスムーズに蓄尿できます。
将来や万が一の備えに関するよくある質問

「将来自分でストーマのケアができなくなったらどうしよう」という思いは、多くのストーマ保有者が抱える悩みです。セルフケアが難しくなる要因は加齢だけでなく、病気やケガによって突然訪れることもあります。
Q.セルフケアができなくなった場合はどうすればよいですか?
セルフケアが困難になることに不安を感じたときは、一人で抱え込まずに相談できる場所を見つけておくことが重要です。具体的な相談先としては、以下のような例があります。
| 相談先の種類 | 具体例 | 相談できること |
|---|---|---|
| 家族・身近な人 | パートナー、子どもなど | 将来の不安や協力してほしいこと |
| 患者会 | 公益社団法人日本オストミー協会(JOA) | 情報交換、同じ立場の仲間との交流 |
| 医療機関 | ストーマ外来 | 専門的なケア、装具の相談 |
| 公的機関 | 地域包括支援センター | 介護に関する総合的な相談 |
| 介護・医療サービス | ケアマネジャー、訪問看護師 | 在宅でのケア、介護保険の利用 |
早い段階から家族や身近な人と将来について話し合っておくことで、実際にセルフケアが困難になったときも安心して対応できます。
Q.災害時など、日頃からできる備えはありますか?
災害などの非常時に備えて、ストーマ用品を備蓄しておくことが重要です。
以下の3つのポイントをおさえて、非常用持ち出し品を日頃から準備しておくことがおすすめです。
【「非常用持ち出し品」として準備しておくべきこと】
- 備蓄の量:最低でも10日〜1ヶ月分の装具やケア用品を準備する。
- 保管方法:自宅内で保管場所を分散させる。可能であれば親戚や知人宅にも置かせてもらう。
- 定期的な確認:ローリングストック方式※を活用し、普段から使い足していく。
※少し多めに買い置きをしておき、「蓄える→使用期限の早いものから使用する→使用した分を補充する」を繰り返しながら、常に一定の量の必要物品を備蓄する方法のこと。
また、災害時にストーマ用品の支給をスムーズに受けるため、自分の装具情報を記録したメモを常に携帯することも大切です。メーカー名、品名、サイズを記録したカードを作成しておきましょう。
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身体障害者手帳の取得と給付制度に関するよくある質問

ストーマ保有者はストーマ用品の給付などの支援を受けることができますが、支援を受けるためには身体障害者手帳の交付が必要です。
Q. 身体障害者手帳の取得にはどのくらいかかりますか?
永久ストーマを造設した方は身体障害者手帳(ぼうこう・直腸機能障害)の交付対象となる場合があります※。この手帳を取得することで、身体障害者福祉法に基づいてストーマ用品の給付といった経済的支援を受けることができ、ストーマ用品の費用負担を軽減できるメリットがあります。
申請から手帳が交付されるまでの期間の目安は、1~2ヶ月程度です。書類の準備から指定医の診断、窓口での申請、審査を経て手帳交付という流れになるため、ある程度の時間がかかります。手帳交付後は、ストーマ用品の給付申請ができるようになります。
※詳しくはお住まいの市区町村の福祉担当窓口にご確認ください。
Q.身体障害者手帳の取得後に、遡って支給を受けられますか?
身体障害者手帳の取得後に、手帳交付前の期間に遡ってストーマ用品の給付を受けることは、基本的にはできません。給付制度は手帳交付後から適用されるため、申請前に購入したストーマ用品については自己負担となります。
※給付額・給付限度額・対象商品は市区町村によって異なり、遡及給付についても対応が異なる場合があります。詳細はお住まいの市区町村の福祉担当窓口に確認してください。
ストーマに関するご相談はヤガミホームヘルスセンターへ
ストーマを使った安心な生活には、正しい知識と適切な対策が重要です。パウチの取り扱い、食事管理、旅行準備、日常生活の工夫など、さまざまな場面での不安や疑問を解決することが快適な毎日につながります。
適切な装具選びやストーマケア用品の活用、一人ひとりの状況に応じた対策を実践することで、充実した生活を送ることができます。
ストーマに関する疑問や不安がある方は、ヤガミホームヘルスセンターへお気軽にご相談ください。専門スタッフが個別サポートを提供し、安心できるストーマライフの実現をお手伝いします。
※医療に関する詳しい相談については、医療従事者にご相談ください。
【ご相談窓口】
ストーマ用品オンラインショップ ヤガミホームヘルスセンター「e.よりそうだん」
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