ストーマ保有者の中には、「夜間の漏れが心配で熟睡できない」や「パウチの膨張や不快感で目が覚めてしまう」といった悩みを抱える方が少なくありません。睡眠の質が低下すると、体調や気分にも影響し、日中の生活にも支障をきたす可能性があります。
本記事では、多くのストーマ保有者が抱える睡眠の悩みと、より快適な眠りを得るための工夫やアイテムをご紹介します。「安心して朝を迎えたい」と願うストーマ保有者の皆さまが、自分に合った工夫を見つけるきっかけとなれば幸いです。
多くのストーマ保有者が抱える睡眠の悩みとは

ストーマを造設された多くの方が、夜間の睡眠に関してさまざまな不安を抱えています。全国のストーマ保有者を対象とした実態調査では、排泄についての不安による睡眠への影響が報告されており、パウチの膨張や漏れの心配、尿の逆流といった不安などが主な要因として挙げられています。
これらの悩みは多くの方が経験するもので、適切な対策を知ることで改善できる問題です。
排泄物が漏れないか不安で眠りが浅い
多くのストーマ保有者が「漏れが気になり数時間おきに目が覚める」「装具が剥がれないか気になり熟睡できない」といった経験をしています。特に就寝中は排泄物の温かさや重みが腹部に直接かかる感触で目覚めてしまうケースが報告されています。
ウロストミー(尿路ストーマ)の方は、蓄尿量の増加による重みや漏れへの不安から、安眠が妨げられることがあります。この不安は装具が剥がれていないかという心配にもつながり、眠りが浅くなる原因となっています。
ガスによるパウチの膨張で目が覚める
夜中から明け方にかけて副交感神経が優位になると、腸蠕動(ちょうぜんどう:腸が消化した食べ物を送り出す動き)が活発になり排泄回数が多くなります。そのため「夜間に数回排泄物・ガスがたまり眠れない」「就寝中のパウチの膨張で目が覚める」という悩みを抱える方が少なくありません。
ガスが蓄積されることでパウチが膨らみ、その感触や重みによって睡眠が妨げられます。特にコロストミー(結腸ストーマ)の方で、ガスの排出量が多い場合は、この問題が起こりやすい傾向にあります。
尿が逆流しそうで不安
ウロストミーの方の場合、就寝時に身体の安静と保温によって腎血流量が増加し、尿量が増加するという特徴があります。長時間横になって安静にしていることで、パウチの逆流防止機構を超えて蓄尿される可能性があるため、尿の逆流への不安を感じる方が多くいます。
逆流が起こると腎盂腎炎(じんうじんえん:腎臓に細菌が感染して炎症を起こす病気)のリスクもあることから、この不安は決して軽視できない問題です。そのため、夜間の尿量増加に対応した適切な対策が必要となります。
ストーマ保有者が快眠するための工夫と対策
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安心して眠るためには、排泄物の漏れやパウチの膨張を防ぐための工夫や対策が重要です。ここでは、ストーマの種類に応じた効果的な快眠の工夫も交えながら、より安定した睡眠を得るための方法をご紹介します。
すべてのストーマ保有者に共通する基本的なものから、コロストミー・イレオストミーの方、ウロストミーの方それぞれに特化したものまで、実践的な方法を取り入れることで、「漏れるかもしれない」という不安から解放され、快眠(安眠)につながります。
※効果には個人差があります。
すべてのストーマ保有者に共通する工夫と対策
まずは、すべてのストーマ保有者に共通する基本的な工夫と対策をご紹介します。
<就寝2時間前に食事を済ませる>
就寝2時間前に食事や水分摂取を済ませておくことは、就寝時の胃腸の働きを抑え、夜間のトラブルを予防するための工夫のひとつです。
食事後は消化活動が活発になるため、排泄物の量や回数が増加する傾向があります。
早めに食事を済ませておくことで就寝時には消化活動が落ち着き、夜間の排泄量を減らすことが可能です。その結果、パウチの膨張や重みによる不快感も軽減され、より安定した睡眠につながります。
ストーマ保有者の食事については「ストーマ保有者の食事術|においやガスを抑える工夫とは」の記事で紹介しています。
<就寝前にパウチを空にする>
寝る前に排泄物を処理してパウチを空にしておくことで、夜間の膨張や重みによる目覚めを軽減することが期待できます。
ストーマには筋肉がないため排泄のタイミングをコントロールできず、さらに夜中から明け方にかけて副交感神経が優位となり腸蠕動が活発になって排泄回数が多くなります。
パウチを完全に空にし、容量を開けておくことで、朝まで安心して眠りやすくなります。
<固定力を高める補助製品を使用する>
装具が剥がれる不安を軽減するためには、固定力を高めるテープを使用するのが効果的です。これらは装具の面板を皮膚にしっかりと密着させるための補助的な製品で、装具の周囲に貼ることで粘着力が向上し、夜間の寝返りや体位変換による装具の剥がれを防げます。
安定した固定により「装具が外れているのではないか」という心配から解放され、深い眠りにつきやすくなります。
ストーマ用装具の剥がれ対策については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
消化器系ストーマの方向けの対策
コロストミー・イレオストミー(小腸ストーマ)をお持ちの方に特におすすめの、便の性状やガスの発生に対する具体的な対策をご紹介します。
<水様便が多い場合には吸収剤を使用する>
水様便で排便量が多い場合は、漏れ防止のためにパウチの中に便を固める吸収剤を入れておくと効果的です。吸収剤は水分を吸収してゲル状に固める働きがあり、パウチ内での排泄物の動きを抑制します。
これにより就寝中の体位変換時でも排泄物が面板の下に入り込みにくくなり、装具の剥がれや漏れのリスクを軽減できます。特にイレオストミーの方で水様便に悩まされている場合には、有効です。
<ガス抜きフィルターの付いた装具を使用する>
ガスが多い方は、ガス抜きフィルター付きの装具を選ぶことで就寝時のパウチ膨張を防げます。ガス抜きフィルターは排出されたガスを自動的に外に逃がしてくれる仕組みになっており、パウチが風船のように膨らむのを防いでくれます。
さらに、フィルターには脱臭機能も備わっているため、においを気にすることなく安心して眠ることができます。特にコロストミーの方でガスの排出量が多い方には、このタイプの装具への変更を検討することをおすすめします。
尿路系ストーマの方向けの工夫と対策
ウロストミーをお持ちの方に特化した快眠のための工夫と対策をご紹介します。夜間の尿量増加や逆流防止に効果的な対策に加え、環境づくりの工夫をすることで、安心して眠ることができます。
以下では、採尿バッグの使用について解説します。ご自身の状況に合わせて取り入れてみてください。
※採尿バッグの使用については、事前に医療従事者にご相談ください。
<パウチを採尿バッグと接続する>
ウロストミーの方の場合、パウチを採尿バッグに接続することで就寝時に尿を排出する手間を省けます。採尿バッグは大容量の外部蓄尿袋で、パウチの排出口とチューブで接続して使用します。これにより夜間に何度もトイレに起きる回数を減らし、より連続した睡眠の確保に役立ちます。
ヤガミホームヘルスセンターでは、「ねじれナイト」という商品も取り扱っています。管のねじれを軽減し、管が外れるリスクの軽減に役立ちます。
ねじれナイト

<容量の大きな採尿バッグを使用する>
就寝時は容量の大きな採尿バッグ(1,000~2,000mL)を使用することで、朝まで安心して眠ることができます。夜間は身体の安静と保温により腎血流量が増加し、尿量が増えるため、通常のパウチでは容量不足となる可能性があります。
大容量の採尿バッグを使用することで、バッグが満タンになって逆流するリスクの軽減が期待できます。これにより、尿の逆流による感染症のリスクも軽減でき、安全で快適な睡眠環境を整えることができます。
クリニー採尿バッグ

ウロガードプラス閉鎖式導尿バッグ 2500ml

テルモ株式会社
<ストーマより低い位置に採尿バッグを設置する>
採尿バッグはストーマより低い位置に設置することで、重力を利用してスムーズに蓄尿でき、尿の逆流を防げます。ベッド脇につり下げたり、布団を2枚重ねて段差をつけるなどの工夫により、適切な高低差を作ることが重要です。
逆流が起こると腎盂腎炎などの感染症リスクが高まるため、この位置関係の確保は安全な睡眠のための必須条件となります。正しい設置により、安心して眠ることができ、夜間の不安を大幅に軽減できます。
バード ラウンドウロバッグ 2000ml

就寝時の不安を軽くするためのヒント

夜間の睡眠に対する不安を軽減するためには、心理的な安心感を得ることが重要です。万が一の事態に備えた環境づくりや、信頼できる人とのコミュニケーションを通じて、ストーマ保有者の方が抱える就寝時の心配を和らげることができます。
防水シーツを使用する
万が一パウチから漏れが発生した場合に備えて、防水シーツを敷いておくと、安心です。「失敗しても大丈夫」という気持ちで就寝できることで、過度な心配から解放され、よりリラックスした状態で布団に入れるようになるでしょう。
防水シーツは寝具を保護し、心理的な安心感を得ることで睡眠の質向上に役立つアイテムです。
パートナーに気持ちを伝えてみる
ストーマに関する不安や心配は一人で抱え込まず、ご家族や信頼できる方に相談することをおすすめします。気持ちを共有するだけでもストレスの軽減につながり、解決策を提案してもらえることもあります。
また、患者会での相談や、ヤガミホームヘルスセンターの「e.よりそうだん」では専門的な相談対応に加えて「オストメイトの会」という患者・患者関係者向けイベントも開催しており、同じ悩みをお持ちの方々との交流も可能です。
「オストメイトの会」の詳細はこちらをご覧ください。
https://www.yagami.co.jp/yhhc/sutoma/club
ストーマに関するご相談はヤガミホームヘルスセンターへ
夜間の不安を少しでも減らして、安心して眠るためには、不安要因を理解し、適切な対策を講じることが大切です。パウチの膨張や漏れへの心配、尿の逆流といった睡眠の悩みに対して、吸収剤や採尿バッグの活用、防水シーツの準備など、さまざまな工夫により安心して眠ることができます。
ストーマ用品に関するお悩みやご相談がございましたら、ヤガミホームヘルスセンターまでお気軽にお問い合わせください。快適な睡眠環境の実現に向けて、サポートいたします。
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ストーマ用品オンラインショップ ヤガミホームヘルスセンター「e.よりそうだん」
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