ストーマ用装具の交換は、日々の生活の中で欠かせない大切なケアのひとつです。しかし、「正しい交換手順がわからない」「装具がうまく装着できない」といった、さまざまな悩みを抱える方も少なくありません。
本記事では、装具交換の基本から、よくあるトラブルとその対処法、皮膚トラブルを防ぐためのケア、さらにスムーズに交換を行うための工夫まで、ストーマを造設された方が日常を安心して過ごすための情報をわかりやすく解説します。
ストーマ用装具交換の基本

ストーマ用装具を適切に交換することは、皮膚トラブルの予防と快適な日常生活を送るために欠かせません。正しい交換方法を身につけることで、装具の密着性を保ち、漏れや剥がれなどのトラブルを未然に防ぐことができます。
ここでは、装具交換に必要な道具から基本的な手順、そして適切な交換のタイミングまで、装具交換の基本をわかりやすく解説します。
装具交換の手順と必要な道具
装具交換を安全に行うために、必要な道具と基本的な手順についてご紹介します。使用する道具は個人の状況によって異なる場合もありますが、一般的には以下のようなものを準備しておくと安心です。
【装具交換に必要な道具】
- 粘着剥離剤(リムーバー)
- 洗浄清拭剤
- ガーゼ
- ゴミ袋
- 新しいストーマ用装具
- (フリーカット装具を使用する場合)ハサミ、ゲージ、油性ペン
【装具交換の基本的な手順】
- 使用中の装具をゆっくり剥がす
- ストーマ周囲の皮膚を洗浄清拭剤とガーゼでやさしく清拭する
- 必要に応じてストーマのサイズを測定し、面板をカットする
- 装具の粘着面を整え、ストーマに密着させて貼付する
- 装具がしっかり密着しているかを確認する
各工程を丁寧に行うことで、皮膚トラブルを防ぎ、安全かつ確実な装具交換が可能になります。
装具の交換頻度と適切なタイミングの目安
装具の交換頻度は、使用する製品のメーカーが設定する貼付期間の目安を参考にしながら、皮膚の状態に合わせて調整することが大切です。一般的には面板がふやけてきたり、溶けた範囲が1cm程度になったタイミングで交換を行います。
夏場は汗により面板の持ちが悪くなることがあります。漏れが生じた場合や面板の粘着力が弱くなった際は、貼付期間の目安に関わらず早めの交換を検討しましょう。
ストーマ用装具の交換方法は下記記事で詳しく解説しておりますのでぜひご覧ください。
よくある装具交換時の困りごとと対策

装具交換は、慣れた方でも時にはうまくいかないことがあります。
「思うように貼れない」「うまく装着できない」といった悩みは珍しいことではありません。
ここでは、多くのストーマ保有者が経験する代表的なトラブルと、それぞれに対する具体的な解決策をご紹介します。
貼りたい位置にうまく貼れない
ワンピース装具の場合、パウチ越しにストーマの位置を確認する必要があるため、面板のストーマ孔を合わせにくいという問題があります。
このような場合の解決策として、面板部分を折り曲げることでストーマが見えやすくなり、貼付がしやすくなります。ただし、凸面(コンベックス)タイプの装具では面板の形状上、折り曲げが難しい場合がありますので、無理のない範囲で行うようにしましょう。
また、ツーピース装具であれば、ストーマを確認しながら面板を装着できるため、位置合わせが比較的容易です。なお、粘着力低下の原因となるため、粘着面には極力触れないように注意しましょう。
面板とパウチの嵌合(かんごう)がうまくいかない
ツーピース装具を使用している場合、面板とパウチの嵌合部分がうまく接続できないことがあります。フランジには固定型と浮動型があり、それぞれに特徴が異なります。
固定型は硬さがあるため浅いしわを補正できますが、パウチと面板を接続する際に、強めの圧力をかけて押し込む必要があります。
一方、浮動型は柔軟性があり違和感が少なく、フランジを指で挟むことであまり腹圧をかけずに嵌合できます。
ただし、浮動型はフランジを指で挟む際に貼付したストーマ周囲の部分が持ち上げられ、皮膚と皮膚保護剤の隙間ができやすくなるため注意が必要です。
腹壁にしわがあり、面板を貼り付けると隙間ができる
腹壁にしわやくぼみがある場合、面板と皮膚の間に隙間ができて排泄物が潜り込む原因となります。
この問題を解決するには、用手成形皮膚保護剤の使用が効果的です。粘土状のやわらかい素材でできており、手で成形してしわやくぼみに埋め込むことができます。
また、腹壁に深いしわがある方の場合、フランジによって面板部分に硬さを持たせたツーピース装具のほうが、腹壁のしわを伸ばして面板を固定することができるため安定します。
ただし、使用方法を誤るとさらなるトラブルにつながるおそれがあるため、必ず医療従事者に相談し、適切な指導を受けた上で使用しましょう。
装具交換時の皮膚トラブルを防ぐケア方法

ストーマ周囲の皮膚は、粘着力のある面板を直接貼り付けているため常に刺激を受けています。また、装具の粘着力が低下したまま使い続けたり、排泄物が漏れて皮膚に付着したりすると、皮膚トラブルが起こりやすくなります。
こうした刺激や汚れを最小限に抑えるためにも、装具の装着や交換の際は適切なアイテムを用いるようにしましょう。
たとえば、装着の際は皮膚保護シールや皮膚被膜剤などのストーマケア用品を使用することで、皮膚への刺激を軽減することができます。また、装具を剥がす際は、粘着剥離剤(リムーバー)を使用し、皮膚が面板に引っ張られないよう、やさしく丁寧に剥がすのがポイントです。
皮膚トラブル対策用品について、詳しくは「ストーマ周囲の皮膚トラブルを防ぐおすすめケア用品」で解説しています。
よりスムーズにストーマ用装具の交換を行うための工夫

装具交換は慣れてくると短時間で済むようになりますが、環境や準備を整えることでさらに効率的に行えます。交換作業をスムーズに進めるためには、適切な環境づくりと落ち着いて取り組むことが重要です。
ここでは、日々の交換作業をスムーズに行うための実践的な工夫をお伝えします。
これらの工夫により、装具交換時の不安を軽減し、自信を持って取り組めるようになります。
交換作業をスムーズにする環境づくり
装具交換は適切な環境で行うことが大切です。交換中はお腹を出した状態で行うため、体が冷えないよう注意が必要です。特に冬場は暖房を使用して室温を調整し、快適な環境で作業を行いましょう。
また、必要な物品はあらかじめ一式そろえて準備しておくことで、落ち着いた状態で交換を行うことができます。スペースが限られている場所では、壁掛け式のオーガナイザー(収納用品)や吊り下げ式の収納バッグを活用することで、洗面所や脱衣所でもスムーズに道具を取り出せます。
加えて、交換作業の時間を短縮するために、面板の穴をあらかじめ開けておくこともおすすめです。鏡を使ってストーマの位置を確認しながら、明るい場所で作業することで貼り付けの精度が高まり、失敗を防げます。
災害などに備えて非常用セットを準備しておくことも重要です。交換に必要なアイテムをリュックなどにまとめておくと、いざというときにも安心です。
外出先でも慌てることなく対応できるよう、日頃から環境整備に気を配ることが大切です。
非常用セットについて、詳しくは「【災害対策】万が一に備える!オストメイト用災害セット&必要な情報を解説」で解説しています。
不安やストレスを軽減する習慣の取り入れ方
装具交換を習慣化することで、精神的な負担を軽減できます。
最初のうちは思ったより時間がかかったり、うまくいかず戸惑ったりすることがあるかもしれませんが、慣れると交換にかかる時間は短縮され、うまくいくようになると自信にもつながります。
交換記録をつけることで、自分の交換パターンを把握でき、適切な交換時期の判断にも役立ちます。また、交換作業を通して自分の体の変化に気づくこともでき、慣れることで日常生活をより快適に送ることができます。
ストーマに関するご相談はヤガミホームヘルスセンターへ
ストーマ用装具の交換は、正しい手順と適切なタイミングを理解することで安心して行えるようになります。貼り付け位置や面板の嵌合、腹壁のしわにより貼付がうまくできないなど、多くの方が経験するお困りごとには、それぞれ具体的な解決策があります。
また、皮膚トラブルを防ぐケア方法や、環境づくり・習慣化による工夫を取り入れることで、よりスムーズで快適な装具交換を実現できます。
ストーマ用品や装具交換でお困りのことがございましたら、ストーマ用装具に関する知識と経験を持つスタッフが、お客様の不安や疑問に寄り添いながらご対応いたします。ヤガミホームヘルスセンターまでお気軽にご相談ください。
※医療行為に関わる内容については、必ず医療従事者にご相談ください。
【ご相談窓口】
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