「ストーマ造設後に脱水症にならないよう、気をつけることはあるのか」
ストーマ保有者は、ストーマ造設前と比べて脱水症になりやすい傾向があるため、注意が必要です。
本記事では、ストーマ保有者に起こりやすい脱水症の原因とチェック方法、脱水症を予防する食事についてわかりやすく解説します。毎日を快適に過ごすために、ぜひ参考にしてみてください。
ストーマ保有者が脱水症になる原因

ストーマ保有者は、下痢が続くと脱水症を起こすおそれがあります。特に回腸のストーマ保有者は、より注意が必要です。自分が脱水症になっているのかどうか判断するセルフチェックの方法も紹介します。
ストーマ保有者は下痢による脱水症に注意
結腸ストーマや回腸ストーマを造設すると、下痢になることがしばしばあります。ストーマを造設すると排泄経路が変わり、造設前と比べて食事や水分を消化吸収するバランスが変わるためです。
下痢になると、腸内で吸収されるはずの水分や電解質が排泄されてしまいます。ストーマ保有者は、下痢が続くことで脱水症にならないよう注意が必要です。
特に回腸のストーマ保有者は、脱水症になりやすい傾向があります。通常食べ物に含まれる水分や電解質は、小腸で吸収された後に最後は大腸で吸収されます。ですが回腸ストーマでは、水分や電解質が大腸を通らないため下痢のような水様便になってしまうのです。
脱水症になっているのか判断するセルフチェック方法
脱水症は、摂る水分量よりも失う水分量が多いときに起こります。意識がはっきりしていても、めまいや立ちくらみを感じれば軽度脱水症の可能性があります。頭痛や吐き気、だるさがあると中等度脱水症の可能性があり、危険な状態です。
ストーマ保有者は、下痢が続くときや夏の暑いときなどには、脱水症かどうかセルフチェックをしてみてよいかもしれません。
脱水症のセルフチェック
- 脱水症の疑いがある:手の甲の皮膚をつまんで離したときに、皮膚が元に戻るのに2秒以上かかる。
- 脱水症を起こしている可能性がある:爪を指で押さえ、白色がピンク色に戻るのに3秒以上かかる。
回腸のストーマ保有者は、1日800mL以上の水様便が排泄されることが多いと言われています。あらかじめ1日の排泄量を把握しておくと、排泄量が普段より多いときは脱水症になる可能性があると考えられます。
ストーマ保有者の脱水症対策

ストーマ保有者は下痢のときに、脱水症にならないよう、こまめに水分と電解質を摂取することが必要です。下痢による脱水症を防ぐ対策として、摂取したい成分や食品も紹介します。ただし、持病により食事内容や水分摂取に制限がある方は、医師(医療機関)の指示に従ってください。
こまめに水分と電解質を摂取
ストーマ保有者が下痢のときは、脱水症にならないよう失われた水分と電解質をこまめに摂取することが必要です。以下のような飲み物や食品で、水分と電解質を積極的に摂取してみてください。
- スポーツドリンク
- ミネラルを多く含む水(主に硬水)
- 塩あめ
- 栄養補助食品ゼリー
また、夏は誰でも脱水症になりやすい季節ですので、特に注意が必要です。ストーマ保有者も脱水症にならないよう、予防的に水分や電解質を多めに摂取することが大切です。
下痢のときに摂取したい食事の成分
下痢のときは、脂質の多いものを避け、消化のよいものをゆっくりと食べることが必要です。水分やナトリウム、カリウムが補給できる温かい汁物や飲み物もおすすめです。以下で、下痢のときに摂取したい食事の成分を紹介します。
低脂肪のたんぱく質
- 鶏のささみ:茹でる・蒸すなどやわらかく調理すると、消化によく、良質なたんぱく質を補給できます。
- 卵:良質なたんぱく質であり、脂質もそれほど多くないため下痢のときに補給する栄養として適しています。
ナトリウム
- 梅干し:塩分が豊富な梅干しは、おかゆに入れて食べると塩分補給に役立ちます。おかゆ自体の水分と梅干しの塩分で、水分とナトリウムを同時に補給できます。
- 味噌汁やスープ: 塩分を含む温かい汁物は、水分とナトリウムを効率よく摂取できます。薄めの味噌汁や塩味のスープであれば胃腸への刺激が少なく、脱水症予防に有効です。
カリウム
- バナナ :カリウムを豊富に含む代表的な果物で、やわらかく消化がよいため下痢のときにおすすめです。潰してヨーグルトに混ぜるとより消化によく摂取できます。
- 野菜スープ: 固形物が摂りにくい場合でもスープの形であれば栄養を摂取しやすく、不足しがちなミネラル補給に有効です。
水分
- 温かいお茶や白湯 :刺激の少ない番茶や麦茶、白湯を少量ずつこまめに飲んで水分補給します。
温かいもの
- 温かい汁物: 温かい汁物は胃腸を温めて消化を助け、腸への刺激も和らげます。
- おかゆや煮込みうどん:やわらかく煮たおかゆやうどんは消化吸収がよいため、水分補給にも適しています。
下痢のときはお腹を刺激する食事を控える
下痢のときは、お腹が過剰に動いている状態です。下痢を悪化させて脱水症にならないように、お腹の動きを刺激する食品は控えるように心がけることが必要です。
控えるべき食品
- 冷たい食事や飲み物
- 香辛料などの刺激物
- 脂質や食物繊維が多いもの
- アルコールや炭酸飲料などの飲み物
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【参考文献】
・比企直樹・高木久美・小西毅・松浦信子、がん研有明病院の大腸がん治療に向きあう食事、女子栄養大学出版部、2015年、135p、p.84-85 96-99
・松浦信子・山田陽子、快適!ストーマ生活―日常のお手入れから旅行まで 第2版、医学書院、2019年、134p、p.6 13 68-71
【参照】
[1]秋田大学大学院医学系研究科 消化器外科学講座>患者さんへ>大腸がん
[2]MSDマニュアル家庭版>03.消化器系の病気>消化器系の病気の症状>成人の下痢
[3]厚生労働省>自分でできる7つのこと